時々送られてくる手紙といい、吉岡先生の言葉といい、私の周りには雑音が多すぎる。聞きたくないことも知りたくないことも、無意識に私の中に飛び込んでくる。
「さっきさ、吉岡先生と話してたよね?」
「え?」
放課後、少し早く屋上に来ていた私に柚が声をかけてきた。見ると、翔太とひな子はSSFへの書き込みをしきりにチェックしている。
「ああ、今朝でしょ? ゴミ捨て行ったらチャイム鳴るから早く戻れって言われて」
「そっか」
「どうしたの?」
「ううん、別に」
「……」
以前から柚が吉岡先生に憧れているのは知っていた。でも、他の女子たちと同じようにただの興味と思っていた。
「気になる? 吉岡先生」
「えっ」
私の言葉に、柚の大きな目がさらに大きくなった。そして一気に顔が赤くなる。
「柚~」
私は柚の顔を見てクスクスと笑った。
「新菜ちゃん、誰にも言わないでよー」
「わかったって」
柚はちょっとオタク気質で、男の人になんて興味がないって雰囲気を持ってたから。
こんな可愛いのに彼氏もいないって残念だなって思っていたけど、まさか本当に吉岡先生が好きなんて……。
「ねぇ、どんなところが好きなの?」
みんなに聞こえないようにコソッと言った。
「えっ……笑った時の目がなくなるような優しい顔……かな」
「へー。そうなんだー」
確かに、吉岡先生のあの笑った顔が好きって言う生徒が多いって聞いたことがあるな。ぜんぜん知らなかったけど、吉岡先生も今も相当人気あるんだ。
「それに、先生も戦隊モノに詳しくて、好みが似てるっていうか……」
「戦隊もの!? ぷっ……」
「もう! 新菜ちゃん笑うなんてヒドイ!」
「ごめん、ごめん。だって柚可愛いなって思って」
結局そこかって思ったけど、戦隊ものが好きなんて、2人は結構話もしているんだなって思った。
「でも新菜ちゃん、誰にも言わないで」
「ん? うん、わかった」
私は柚の恋する顔になんの疑いも持っていなかったんだ――。