始めから『フリ』っていうのは言われていたし、なんで私がそんなことしなくちゃいけないんだって思っていた。

 でも今は、この『彼女のフリ』が自分を苦しめている気がする。

 それは始めの頃と違う意味での想い。

 自分の本当の気持ちにウソをついて『フリ』をしなくちゃいけないなんて……。

「こんなに、たくさんの嫌がらせの手紙を送ってくるなんて……」

「あはは。それだけ蒼生くんは人気があるってことだよ」

「……」

 視線が冷たい……。

「なんだ、これ」

「え?」

「“安達新菜、お前を殺す”こんな手紙もいつもなのか?」

「え……。今は中身なんて見ないで捨てちゃうから、そんな内容なんて初めて知った……」

“お前を殺す”……? ずいぶん荒々しいな。

 蒼生くんが見つけた、その手紙を手に取ると、無地の白い便箋に封筒、男か女か分からなくしているつもりでも、文字からすぐ女の子からだということは分かった。

「差出人はナシか。まあ、文字を偽装して隠そうとしてもすぐ調べられるけどな」

「……でも蒼生くん、こんな手紙がきてもそれ以上の何かって今までないから、ほっておけばいいよ」

「新菜」

 こんな手紙や文句や嫌がらせは、いつもこと。慣れてしまったこともあって、そう簡単に思っていた。

 この時までは――。