「蒼生ー! 水沢奈乃香なんだって?」
ひな子と柚が声をかけ、小走りに近づいて行く。
「ああ、ミッションのことだよ。一旦保留にしたことを話したら、納得いかないみたいな感じだった」
「うーん、そうだよねぇ~。自分の悩み事が解決されるって思ってたんだもん、ガッカリしちゃうよねぇ~」
「……」
納得いかない感じだった? その割にあの笑顔……。私はすれ違った水沢奈乃香へ振り向いた。そこにはもう、彼女の姿はなかった。
「新菜どうした?」
「……ミッションを保留して、大丈夫かなって思って。水沢奈乃香って私は話したことないから、どんな人なのかも知らないし」
「ああ、SSFのこと誰かに言わないかってこと?」
「うん」
「大丈夫じゃない? ミッションが無くなったわけじゃないし」
「うん……それなら、いいんだけど」
「じゃあ、次のターゲットを決めよう。この間話した“uta no oto”の人物を、ひな子、翔太と一緒に早急に詳しく調べてくれないか」
「オッケー。翔太に連絡しておく」
「ああ、頼む。……新菜? まだ水沢奈乃香が気になるのか?」
「え……うん。なんとなくね」
ずっと続くこの違和感が、胸に引っかかるものの原因がなんなのか、この時はまだ気付けずにいた。