「でもさ、ちょっとこっちの書き込み見てよ」
手招きするように、ひな子がみんなを呼んだ。
『毎朝、同じ電車に乗る男の子に片想いしています。でも制服ではないので、どんな人なのかもわかりません。ですが最近その人の姿が見えなくなってしまいました。会えなくなるのなら声をかけてみればよかったと後悔しています。どうか、その人を探してください』
見ると私たちと同じ学年の女子からのメッセージだった。
「水沢 奈乃香? 2年D組。陸くんのクラスだね。陸くん知ってる?」
「んー、そんな名前いた気もするけど、あんまり印象にないな」
「そうなんだ……」
陸くんは頼りなげに答えた。そうだよね、今までの陸くんは抜け殻のように心を閉じ込めて過ごしていたんだもん。同じクラスだからといって知らないのも当然か……。
「ひな子、その水沢奈乃香の悩みが気になるのか?」
「うん、それだけじゃないんだよね。同時期くらいに届いたメッセージがこれ」
ひな子はそう言いながら再びスマホをこちらに見せた。
『同じ電車に乗る、K学園高校の女の子が気になっていました。ですが、僕は引っ越しをしてしまい、その電車に乗ることが出来なくなってしまいました。最後に挨拶だけでもすればよかったと後悔しています』
「え? どういうことだ?」
翔太は組んでいた腕をさらに強く組直すと頭を抱えるように言った。
「お互い同じ悩みを抱えている2人なんじゃないかって思ったんだろ?」
「そう! 蒼生その通り!」
「え? どういうこと?」
「え? どういうこと?」
私と柚がハモる。