「おい、チャイム鳴ったぞ。早く教室に戻れ」
「!」
階段を降り、2年の階に到着した時、後ろから声をかけられ私たちは驚き振り向いた。
「あ……はい」
「ビックリした、吉岡先生か……」
私たちに声をかけた吉岡先生は1年の学年主任をしている。私たちに笑顔で手を振ると吉岡先生は1年の教室のある階へ降りて行った。
「ビックリした~。見つかったかと思ったよね」
「うん」
「吉岡先生、カッコイイ~」
「柚!?」
目をハートにしたような顔で吉岡先生を見つめる柚に、私とひな子は顔を見合わせた。
「柚、あんなのが好みなの!?」
「え~、ひなちゃん、吉岡先生のカッコよさ分からないの~?」
2人の言い合う姿に笑った。
確かに吉岡先生は以前からすごく人気があった。若いのに学年主任まで任されるような信頼の厚い優しい先生で、見た目もシュッとしていてイケメンだ。女子から人気があるのは知っていたけど、まさか柚もその1人とは……。
蒼生くんが転校して来てからは、蒼生くんの人気に押されて吉岡先生のことを忘れていたけど、今でも根強い人気だったんだな。
「……」
「新菜? どうしたの? 急ごう」
「あ、うん……」
そっか……蒼生くんが転校して来て半年が過ぎたんだ……。
人助けなんてこんなことをする意味も、蒼生くんがどんな人なのかも、彼女がいるのかも……私は何も知らないんだ……。
今までどうやって生きて来たのかも、これからの蒼生くんの目的も、何もわからない。