「蒼生もさ、新菜には絶大な信頼を持ってるって感じだし、だからこのチームにも一番に誘ったんじゃないかって思ってたし」
「え……そうなのかな……」
「うんうん、私もそう思ってた! 蒼生くん、なんでも最初に相談するのは新菜ちゃんにだし、意見を求めるのも新菜ちゃんにだし。2人は始めからそういう関係なんじゃないかって思ってたよ」
「ちょっと、ちょっと! ぜんぜん違うから。私だって蒼生くんのこと、まだよく知らないし……」
「そう? でもさ、気に入らない人になんて彼女役頼んだりしないと思うよ。“彼女のふり”なんかじゃなく、本当にくっついちゃえばいいのに」
「うん! 私もそう思う~」
「もう、2人とも……」
2人のニヤけた顔を見ながら、ため息が出た。
だって、本当に蒼生くんのこと何も知らない。ふと考えて、寂しさに似た思いがよぎった。
丁度その時、学校のチャイムが遠くに聞こえた。
「あ、いけねっチャイム鳴っちゃった。そろそろ戻ろうか」
「うん、新菜ちゃん行こう」
「……うん」
私たちは屋上へ続く階段近くに人がいないことを確認すると、そっと屋上を後にした。