蒼生くんの言葉に一瞬ゾクッとした。
「いらない」……親にそんなこと言われたら、私はどうするだろう……。反抗したって、家を飛び出したって、今の私にはママがいなければ生きていくことも出来ないんだから……。
そう思うとため息しか出なかった。
陸くんの悩みのことや、蒼生くんの両親のこと、私なんかより大変な思いをしている人はいっぱいいるっていうのに。
私は自分だけが可哀想な人間なんだって思っていた。
1人孤独で、誰も助けてくれなくて……。
あ……。
『1人孤独で、誰も助けてくれなくて』
蒼生くんは自分のような、解決できない悩みを抱えている学生たちの力になろうとしているってこと?
静かな夜の街に響く車のエンジン音が、なぜか心の奥に痛いくらいの振動を与えていた。
弱い街灯のあかりに映し出された蒼生くんの影が、大きくうつむくのがわかった。
「今さら遅いんだよ……」
「え?」
「……今さら親面したって遅いんだ」
蒼生くん……。
自分より酷い親っていないと思っていた。
虐待とかはないけど、ほったらかしも同じようなもんだって思ってた。陸くんもそうだったけど、蒼生くんも私には想像できない大きな悩みを抱えている……。
「ほら、送ってくよ」
ベンチから立ち上がった蒼生くんは私を見つめ微笑んだ。
どこか……さみしそうな瞳をして。
もし……もし、蒼生くんの悩んでいることがわかったら、私はそれを助けてあげることは出来るのかな……?