「母親はさ、雑誌の編集長やってて、いつも忙しくて……オヤジはカメラマンで自由奔放で、そんな奴のどこに惚れたんだか知らないけど、結局はお互い仕事が忙しくて会えなくなって、そのまま……」

「……」

「両親とも家に居ることが少なかったから、俺は好き勝手やってた。夜遊びして、家に帰ることもなくなって……悪さもした。警察にお世話になったことだってあった」

「え……」

「新菜に言ったら、俺のこと嫌いになるような悪さだっていっぱいした」

「……」

上目遣いに私を見た蒼生くんの瞳に、ドキッと胸が大きく鳴った。

蒼生くんを嫌いになるような……?

「だから、ここらへんじゃ俺の顔知ってる奴がいてもおかしくないんだ」

「……そっか」

 だからさっきの人たちも、蒼生くんのこと知っていたんだ。

「俺がどんなことをしても、悪さしても親は変わんなかったよ。新菜みたいにうるさく言われた方が、まだ気にしてくれているんだって感じられたかもしれないよな」

「私の親の方がマシってこと?」

「そうさ。どんな悪さしても金で解決してシカトされるより、その髪の色はなんだって、成績を落とすなって言われる方がまだ子供に関心があるように思えるけど。『いらない』なんて親から言われるより、ずっとマシだろ」

「……」