「……」

 な……に……?

 どういうこと?

 さっきの男たちの威勢のよさが嘘みたいに、尻尾を巻いて急いで逃げていく。
 あの慌てた様子は普通じゃない……。それにあいつら『蒼生』って名前を呼んでた。

「蒼生くん……」

「おまえ、こんな時間に何やってんだよ!」

「あ……」

 お礼をいうよりも早く、蒼生くんの鋭い言葉が飛んできた。

「……ここは昼間と夜じゃまったく顔を変える街なんだ。こんな時間に1人で、しかも今の新菜のナリは誘ってくれって言ってるようなもんだ」

「……」

 そんなこと……。

 タイトなデニムパンツにボアのジャケット……こんなのいつも着てる服なのに……。

「この頭」

 そう言いながら蒼生くんは、私の髪に触れた。

「あ……金髪……」

 やっぱりこれがハデに見えるのか……。今じゃこれくらいの色当たり前のように思うけど、くくられると「派手」という部類に入れられてしまう見た目なのだろうか。

 でなきゃ、クラスのみんなだって驚きはしないだろうし、ママだってこの頭を見て怪訝な顔をしたりしないだろうし。

 だけど……。

「……助けてくれて、ありがと」

「ああ」

 蒼生くんは「まったく」と言うように、ため息をついた。