周りの観客に深く頭を下げる武下樹の横で、目を潤ませる陸くんの姿があった。

「……まさか和也が居るなんて……」

 無言から先に口を開いたのは武下樹だった。

「……まだピアノを続けていたんだな」

 武下樹の言葉に陸くんは首を振った。

「え?」

「……もうオレにピアノを弾く資格はないと思っていた」

「……」

「今日、樹に会えるチャンスをもらって、必死で練習したんだ」

「……和也……」

 駅構内にあるカフェで話をしていた。
 他のメンバーたちは少し離れた席で2人を見つめる。

「ずっと謝りたかったんだ。謝ることが出来なければ死ぬことも出来ないと思って生きてきた」

 絞り出すような陸くんの言葉だった。

「……もう、罪悪感を抱えて生きなくていいよ」

 武下樹の言葉に、いつも頑なに無表情だった陸くんの硬い仮面が外れるように、瞳から涙が落ちた。