「……うん。イジメの相手は陸の幼馴染、武下(たけした) (いつき)。今この武下 樹は、そのイジメが原因で引っ越しをしてこの街から出ている。陸も同じ街から出て、今は一人暮らしをしているみたい」

「一人暮らし? 高校生でか?」

「そうなの。人づてにお父さんのことも調べてみたら、陸くんのイジメが原因でお父さんも仕事を辞めなければいけなくなったみたいで……」

 ひな子と柚は自分のスマホを見ながら、読み上げるように話し出した。


「一人暮らし……。父親が仕事を辞めるって、そこまでのイジメって単純なものではなさそうだな」

「そうなんだよ……」

 いつも冷静でクールな翔太が言葉を詰まらせるって、よほどのことだ。
 それは、ひな子も柚もそう。みんなが思いもよらない現実を知ってしまったような、やるせない表情を見せていた。