「父親はさ、仕事とは言っても、家庭を省みることをまったくしなくて。それで両親は離婚して……」

「離婚?」

 離婚……蒼生くんの両親も……。

「そう考えるとさ、カメラマンとして世界を飛び回るなんて夢だよな。どれだけの人がカメラだけで稼げているのかも疑問だし、それだけ何かを犠牲にしないと難しい気がする」

「そっか……」

 ビックリするくらい将来のことを、そこまで考えていたんだ。

 この時の蒼生くんの顔が、今まで見たことのないような切ない顔に見えた。

 それは、両親のことなのか、カメラという夢のことなのか、この時の私には何も分からなくて。

 蒼生くんも何か深い悩みを抱えている……ただ、そう感じた。