「なんだよ」
「あ……カメラにこんなに詳しくて、カメラ好きならお父さんと同じ道に進むのかなぁ?と思って」
「……親父は世界を飛び回っていたから、ほとんど家に居なかったんだ。それでも親父の撮る写真は美しくて、俺もそんな写真が撮れたらいいなとは思ってた」
「……」
「俺がそう感じたように、人にそう思わせられるような写真が撮りたいって、ずっと思ってたな」
「……」
「俺も世界を飛び回れるような写真家になりたかったなって思う」
「……全部、過去形なんだね」
「え?」
驚くように蒼生くんは私を見つめた。
「お父さんが家に『居なかった』、『思ってた』とか『写真家になりたかった』とか」
「あ……そんなふうに言っていたなんて無意識だったな。さすが新菜、人の言動に敏感でいろんなことを察知できる」
蒼生くんはクスクスと笑いながら言った。なんだか話を誤魔化された気がする。