私が考え事している間も、遠くからカシャカシャとスマホのカメラのシャッター音が聴こえていた。「やめて」って言ってるのにぜんぜん話を聞いてない感じに飽きれる。

「……蒼生くんすぐ写真撮るけど、写真好きなの?」

 スマホを見ながらクスクス笑う蒼生くんへ声をかけた。

「……」

 どうせ私の変な顔の写真見て笑ってるんだろうけど……。

「んー、まぁなー。父親がカメラマンだから、小さい頃からカメラには触れていたかな」

「お父さんがカメラマン!? カッコイイね」

「……さぁ、どうだか」

「え?」

「学校にはカメラなんて持ってこられないからスマホになっちゃうけど。それでもスマホのカメラもなかなかの高性能なんだ」

 まるで私の話をそらすように、そう言いながらスマホの画面を私に見せた。そこにはボケーッとした私の顔が写っていた。

「ぎゃー! それ消してー!」

「あはは、ヤダねー」

 蒼生くんは私の焦った様子を見て、大きく笑った。

 カメラを奪おうとしても、私よりもずっと背の高い蒼生くんの伸ばした手に届くわけがなくて。
 何度も何度も背伸びをする。