「そう言えば、下は蒼生を探す女子で騒がしかったぞ。ここを出る時、見つからないようにしないと」

「そうだよね、休み時間や空き時間は、蒼生を探して女子が校内をウロウロしてる。まさか屋上にいるなんて思ってないだろうけど、ここが見つかったら大変だからね」

 翔太とひな子の慎重な2人からの言葉だった。

 休み時間や放課後になると、蒼生くん目的で女子生徒が2年の階に溢れ返っていた。それは蒼生くんが10月に転校してきてから4ヶ月たった今もずっと。

 転校してきた当日のように、蒼生くんの人気はすごいものだった。
 教室でも、休み時間は囲まれていたし、蒼生くんが動けば後を追いかける女子もいた。そんな様子を私は、ただ見ているだけ。

 話かける用事もないし、そんな隙を周りの女子は与えないから、蒼生くんに近づくことなんて出来なかった。それは男子も一緒で、声をかけようと思っても、囲んでいる女子が多すぎて近づくことも出来ないようだった。

「もうさ、蒼生くんには彼女がいるんだから、みんなも諦めればいいのにねぇ。ねぇ、新菜ちゃん」

「……うん」

 ニヤニヤしながら声をかけてきたのは柚だった。

「まあ、フリだとしても、女子の安達への風当たりの強さを見ると『蒼生の彼女』という存在は理解しているみたいだよな」

「新菜は大変だけどね~」

「……」

 ――そう。
 翔太とひな子が言うように、“蒼生くんの彼女”というのは、フリなんだ。

 “彼女のふり”