そこには、あの、蒼生くんの撮った海の写真があった。
それはまぎれもなく、私が駅のホームで見たあのグレーの空、雪が海に溶ける、あの写真だった。
「どうして、これ……」
「あの後、蒼生が病院へ戻った後、この写真のUSBを渡されたんだ。大切なものだって」
「……」
蒼生くんが……。
翔太はパソコンの画面をクリックした。
すると、画面左から歩いてくる女の子の後ろ姿。写真の前で止まり、見つめる。
その画面が少しずつ色を増していった。
モノクロだった世界が、薄い色からだんだんと濃くなっていく。
空も、海も、砂浜も、写真すべてが……そして、その写真を見つめる後ろ姿、金髪の長い髪、それは間違いなく私だった。
あの時の私、だった。
色の無い世界、何もかも無意味だと思っていたあの時、この写真を見て私のすべてが無音になった。
「どうして……」
言葉がうまく出てこない。
まさか、もう一度この写真を見ることができるなんて……。