「ん?」

 陸くんの後ろから顔を覗かせた女の子が1人。

 あれ……見たことがある……。

「え!? 春見詩音!? あ、ごめんなさい。春見さんがなんで……」

「え? 新菜知らなかったっけ? 2人、付き合ってるんだよ」

「ええ!?」

 カップを片手に、なんでもないように答えるひな子。その周りでも何でもないように話を続ける、翔太と柚の姿。この状況を知らなかったのは私だけってこと!?

 そりゃさ、学校でも卒業してからも、受験勉強に追われていた私は、少しみんなから離れていた時間はあった。だけど、連絡は取り合っていたし、みんなの近況なんかも聞いていたはずなのに……。

「ほら。春見さんのミッションが終わってから、春見さんは陸のことが気に入っちゃってさ。すごいアプローチしてたでしょ?」

「う、うん。それは知ってたけど……」

「結局、陸も悪い気はしてなかったってことだよ。な」

 席に着いた陸くんと春見さんは、みんなの話に顔を赤らめた。

「そっか。みんなと会わなかったのは数ヶ月でも、いろいろと変化していたんだね」

 まさか、SSFのターゲットになった2人がカップルになるなんて思いもしなかった。今のこの2人の幸せそうな顔を、蒼生くんが見たらなんていうかな。本当に心の底から喜んだと思う。

 それにしても、勘が頼りだった私の力は無くなってしまったのかな。2人の様子にまったく気付かなかったなんて。