カシャカシャ。

「!」

 シャッター音が聴こえた気がして私は振り向いた。

 長く、長く続く、桜並木の道。

 振り向いたそこには誰の姿もない。冷たく降り続く真っ白な雪が遠くまで鮮明に見えていた。

「……」

 いつも聴き慣れたカメラのシャッター音。聴こえるはずはないのに、鳴った気がして何度も振り返る。

 そこに、君がいるはずはないのに……。

「新菜! こっち!」

 桜並木の横。道から少し外れたところにある小さなカフェから、ひな子が顔を覗かせ大きく手を振った。

「ひな子ー! 久しぶり! ごめんね、遅くなって」

「ううん、ぜんぜん。まだ、みんな集まってないんだ」

「そうなんだ。間に合ってよかった」

 久しぶりに見たひな子は、相変わらずの美人で、カッコイイ感じに仕上げたショートヘアも以前と変わってはいなかった。高校時代いくつも部活を掛け持ちしていた活発な感じは今も健在だ。