「火事!?」

「いや、そこの理科室で何かあったんだ! 下は煙で真っ白だ。何も見えない!」

 途中まで階段を降り、見に行っていた陸くんが慌てて戻って来た。

 そして学校中に響く防犯ベルのけたたましい音に、自分たちが屋上に取り残されていることに気付いた。

「どうする!? ここから出られないよ」

「ねえ、みんなー! ここに消火器があったよ!」

 小さい体の柚が抱えるように持ってきた、大きな消火器だった。

「使えるのか?」

「わかんない」

「消防に電話した方がいいんじゃないか!?」

「いや、もう消防車は来てる」

 遠くを見つめていた蒼生くんが言った。見ると遠くにサイレンを鳴らし学校に向かって来ている消防車が見えた。

「きゃああああ!」

 柚の叫び声に振り向くと、下に転がった消火器から真っ白な粉末が噴き出ていた。

「柚!」

「何、やってんのー!?」

 ひな子と翔太が慌てて消火器のホースを握った。でも消火器は止まる様子はなく、その勢いの強さに真っ白な粉が空へ舞い上がった。