「新菜は俺たちが手を出さなくても、それをもう解決出来ていたんだ」
「え、新菜そうなの?」
「あ……」
突然、みんなの視線が私に集まった。蒼生くんの言葉に動揺する。解決出来ていたなんてそんな大それたことでもないのに……。
「よかったね新菜ちゃん! お母さんと仲直りしたんだ?」
「うん、まぁ……仲直りっていうかね。私が勝手にイライラしていたこともあるんだけど。まぁ、今のところママも穏やかっていうか……」
「そうなんだ! 新菜よかったね」
「なんだよー。安達がターゲットって聞いた時はよほどのことだって思って心配してたんだぞ」
「翔太ありがと」
『心配してたんだ』そんなふうに言ってくれる人が現れるなんて……。
今まで1人で過ごすことが当たり前で、その方が気が楽だって思っていた。本当になんでも話せる人が出来るなんて想像も出来なかった。
いつも思っていた。みんなの明るい声が響く屋上は時が穏やかに流れる。
こんな時間を私はいつまでも過ごしていきたいと思った。
「……」
みんなに囲まれる私を遠くからそっと見つめる蒼生くんと目が合った。
ほんのり、気付かない程度に口角が上がり笑っているように見えた。それが一瞬、私を不安にさせた。
「蒼生くん!」
無意識に蒼生くんへ大きく声をかけ、ワイシャツの裾を掴んだ。みんなは驚くように振り向いた。