赤く、赤く、染まった雲がゆっくりと流れる。

 電車から見上げた空は、すでに茜色になっていた。

 初夏を思わせるようなこの時間の空はまだ明るくて、なんとなく心が温かくなるような、そんな空を真っ直ぐ見つめた。

「ママ」

「なに?」

「あの人と付き合ってもいいよ」

「は!?」

 周りの人に聞こえないようにコソッと言った言葉に、ママは大きく反応した。

「ママ、そんな大きな声出さないでよ」

「なっ……新菜が突然変なこと言うからでしょう!?」

「だってママ、好きな人いるんでしょ? 別に結婚してもいいよ」

「ちょっと新菜!」

 心なしか顔が赤くなったママに笑った。

 あ、この夕焼けのせいか。