「新菜!」
警察署の自動ドアが開くと、大声で飛び込んできたのはママだった。
静かだった警察署のロビーに居た人が一斉にこちらを見た。
大きなカバンを抱え走り込んでくる。仕事の途中だったことは恰好からすぐに分かった。
「新菜! あんた何やってんの!?」
怒鳴るように私の手を掴み上げた。
ほら、やっぱり。
こんなことになってもママは……。
「本当に申し訳ありません!」
「……」
「何があったのか……。本当に何も知らなくて、私の責任です。申し訳ありません」
「いえ、お友達のことでお話を伺っただけですから。お嬢さんは何も」
「……」
初めて見るママの姿だった。
「新菜! あんたも謝りなさい」
そう言いながらママは何度も頭を下げた。
プライドの高いママが、何度も何度も頭を下げた。
自分の姿ばっかり気にするママが髪を振り乱し、何度も、何度も頭を下げていた。
私の横を通り過ぎた蒼生くんが、そっと私の手を握った。
そして、振り向き微笑んだ。
ママの姿に、微笑んだ蒼生くんの笑顔に、私は溢れる涙を抑えることが出来なくなっていた。