「とにかく、署で話を聞かせてもらおうか」

 刑事さんが蒼生くんの腕を掴んだ時、ドサッと大きな荷物が地面へ落ちた。

「蒼生くん!!」

 目の前に停められた黒い乗用車に蒼生くんは押し込められると、それを止めるように私は刑事さんの洋服を掴んだ。

「新菜、やめろ! 大丈夫だから」

「大丈夫なんかじゃない!」

 蒼生くんは……蒼生くんの命をこんなことで無駄にしてしまうなんて出来ないと、必死だった。1分1秒だって大切な時間なのに!

「新菜? 安達新菜は君のことか?」

「え?」

「通報を受けた人物の中に君の名前もあったんだ。君も一緒に来てもらおうか」

「!?」

 え!? 私も通報を受けていた!?

 突然、腕を掴まれ動揺する。

「そいつは関係ない!」

 車の中から蒼生くんが叫んだ。

「見れば分かるだろ! 高校の友達だ。何も関係ない!」

 蒼生くん……。

 今まで顔色一つ変えなかった蒼生くんの取り乱し方に、刑事さんはなにか疑っているようにも感じた。

「少し黙れ。話を聞くだけだ」

 そう言うとそっと肩を押され、車に乗せられた。

「……」

「新菜……」

「蒼生くん……」

 走り出した車の中、蒼生くんは何度も『ごめん』を繰り返していた。

 初めてのことに足が震えた。

 でもそれ以上に『高校の友達』『関係ない』蒼生くんの言葉が私の胸にチクリと針を刺していた。

 私のことを守るためだって、分かっていても。