「なんですか突然。もう何もしてませんよ、俺」

「蒼生くん……」

 冷静に答える蒼生くんに驚き、振り向いた。警察が目の前にいることも、声をかけられていることにも緊張なのに、蒼生くんは表情を崩しもしない。

「通報があったんだ。君が違法薬物を使用しているようだって」

「は!? 違法薬物!? あ……」

「『あ』? 何か心当たりでもあるのか?」

「いや、その通報って若い男だったんですか?」

「それは話すことは出来ないな」

 若い男……。

「蒼生くん、それって……」

蒼生くんの言葉にすぐ思い浮かんだのは、いつも私のことを着け狙っていたアイツらのこと。蒼生くんのこと、すごく恨んでいる様子だったし、最近は何もなかったから忘れかけていたけど……。

「蒼生くん、なんで……あの男たち……」

「水沢奈乃香だよ」

「え!?」

「昔の俺を知ってるって言った時、もしかしたらって思ったんだ。あの男たちの仲間だろう」

「水沢さんが?」

 まさか、あの男たちの仲間なんて……。あれから私への嫌がらせもなくなって、水沢さんも大人しくなったって思っていたけど、まさかこんなことをするなんて!

「自分たちの縄張りを荒らされたと勘違いをして、俺が邪魔だと思ったんだろう」

「だけど、こんなこと……こんな嘘ばっかり言って……」