「違う! もう母親なんて関係ない。俺はやりたいことがあるだけだ」
「私が治療をしてって言っても?」
「……」
蒼生くんはゆっくりと振り返った。
「私が……生きてほしいって言っても?」
「新菜……」
ああ……ダメだ……。
我慢しようと思ったのに、「生きてほしい」その言葉が自分の心に突き刺さった。
ツンとした鼻の痛みに耐えても、溢れる涙は止まらなくて……。
「新菜……」
「月城くんだね? 月城蒼生」
「!?」
マンションの入り口まで来たところで、柱の影から突然男性2人が飛び出して来た。
「警察だ。ちょっと話を聞かせてくれるか?」
警察!?
私服を着ている若めの男性はそう名乗ると、テレビで見たことがあるような黒い手帳を蒼生くんに向かって差し出した。