後を追うように教室へ戻ると、そこにはもう蒼生くんの姿はなかった。

「蒼生くんは?」

「え? 月城? なんだか慌てるようにカバンを持って出て行ったけど。帰ったんじゃね?」

 教室中を見回してもまだお昼を食べている生徒はたくさんいる。声をかけた隣の席の男子だって、まだのんびり飲み物を片手にスマホでゲームなんてしているのに……蒼生くんは帰ったの?

 私があんな話をしたのがいけなかったの?

 そう思い出したら、なんだか落ち着かなくなって、私は蒼生くんの後を追うように教室を出た。

「安達ー、お前も帰んのかー?」

「先生には適当に言っておいてー」

 どうせ私なんていなくたって、誰もなんとも思わない。

 遅刻や早退だって、私なら当たり前のことだって、きっと思われているはず。

「……」

そう……私なんて……。

「いたっ!」

「!」

 廊下の角で突然誰かにぶつかり、目を開けると前にはひな子と翔太の姿があった。

「え? 新菜。どこ行くの?」

「あ……」

「蒼生か?」

「……うん。どうして」

 翔太の言葉に私はうつむいた。

「さっき蒼生が学校を出て行くのを見かけたからさ。後で連絡を入れようと思ってたんだ」

「そっか……」

 やっぱり帰ったんだ……。