「どうした? 新菜から呼び出すなんて」

 振り向いてそう笑う蒼生くんは、いたって普通で、今までと何も変わらない。

 強い風が巻き起こる屋上に、今は2人きり。

 顔を隠しがちな蒼生くんの前髪が大きく揺れ、時折見せる優しい瞳が私を見つめた。

「ねえ、蒼生くんがSSFを作った理由ってなんでだっけ?」

「え? 前に話した通りだよ。俺は今までたくさんの悪さをしてきた。生きてきた環境を恨んで、それを親のせいにして、悪い世界で生きてきた。だけどその罪滅ぼしのために、誰かの悩みを解決したいって思ったんだ」

「どうして突然、罪滅ぼしなんて思ったの?」

「……新菜?」

 私の質問を不思議に思ったのか、蒼生くんは真っ直ぐ私を見つめた。

 ごくっと息を飲んだ。

「本当のことを教えて」

「……」

 蒼生くんは風で巻き上がる髪をぐいっとかき上げると、遠く空を見つめた。