あの日のことは、家に帰っても頭の中を整理するのに時間がかかった。

 そんな中で一つ思い出したことがあった。吉岡先生があの時言っていた、蒼生くんが『嘘をついている』ってこと。それはもしかすると病気のことだったのかもしれない。
 先生たちは蒼生くんの病気のことを知っていて、私たち生徒には隠しているということ。

 お母さんの話、蒼生くんの話、何が本当で私はこれからどうしたらいいのか……。

『あなたから病院に戻るように、蒼生に言ってほしいの』

 お母さんのあの言葉。

 私が話して蒼生くんが聞いてくれるんだろうか。私にそんな力があるんだろうか。

 考えても、考えても、答えは見つけられず、ため息ばかりが増していった。

『余命1年』

 そんなこと……そんなこと、私は信じない。