「一人暮らしをする時も、必ず病院の先生とは連絡を取り合うように言っていて、先生も時々マンションに見に行ってくれていたようなんだけど……」
「あ……その先生って、女性の方ですか?」
「ええ」
「……」
じゃあ、あの時マンションの前で見た女性って病院の先生なのかも……。
「はぁ……」
私なにやってるんだろ……。
誤解もいいとこ。こんなことでSSFを辞めたいなんて言ってしまったなんて……。
「蒼生には病院に戻ってもらいたいの」
「それを私が蒼生くんに?」
「ええ」
「どうして私なんですか? お母さんからじゃ駄目なんですか?」
「……さっきもお話したけど、蒼生は今まで人物を撮ることなんてなかった。それが蒼生のマンションに行ったら、あなたの写真がたくさん飾ってあったの。あなたは蒼生の特別なんじゃないかって」
「私が蒼生くんの?」
「ええ、あなたの言うことなら聞いてくれるんじゃないかって……。あなたの言葉なら蒼生はきっと聞き入れてくれて病院に戻ってくれるんじゃないかって。それに……蒼生は私の言葉なんて聞いてはくれないから」
「……」
「私がいけなかったのも承知しているけど、だからこそ蒼生にはちゃんと治療をしてもらいたい。早く病院に戻ってもらいたいの。でも……」
「……でも?」
「あの子はいつも『やらなきゃいけないことがある』って、そればっかりで……」
「やらなきゃいけないこと……」
私は思わず口を手で塞いだ。