「まだ時間あるかしら?」

「……はい」

 駅まえの小さなカフェ。人の声があまり届かない席を選んで私たちは席についた。

 このまま帰るなんて出来ないと思った。まだ頭の中はパニックで、こうやって蒼生くんのお母さんと話していることでさえ不思議に感じていた。

 突然の話に、すべての言葉が自分の中で理解できるまで相当な時間を要した気がする。見上げた店内の時計は18時を回っていた。

「そもそもは私たち、父親と母親が原因だと思っているの。私たちがこんなじゃなければ……もっと蒼生に愛情をかけていたら、こんなことには……」

「……」

 私は残りわずかになったアイスティーに口をつけた。

 愛情?

 そんなの私にだってわからない。

 そんなもの親からもらった記憶だってない。