「これ全て安達さんが写っているの。あの子は父親に似て風景ばかりを撮って、人物を撮ることは一度もなかった」
「……」
「この間マンションに行ったら、風景の写真よりもあなたの写真がたくさん現像されていたの。だから、あなたの言葉なら蒼生も聞き入れてくれるんじゃないかって」
私は大きく頭を振った。
「ごめんなさい……何がなんだか……。どうして蒼生くんが私を……。それに余命とか、病院に戻るとか……」
話がまったく理解出来ずに……。
もう目と鼻の先には、いつも使う駅が見える。同じ学校の生徒何人に抜かされたのかもわからないくらい、私はその場から足を進められなくなっていた。
「そうよね。何も理解出来ないわよね」
そう言って微笑んだお母さんの顔は、なんだか寂しそうに見えた。