「この写真は、あなたでいいのかしら」

 蒼生くんのお母さんはそう言って写真を私へ差し出した。

 見るとそれは、いやいや言いながらも屋上で撮られた写真。風になびかれた髪が巻き上がり、振り向く私の姿だった。

「はい、私です」

「……あなたにお願いがあるの」

「お願い……ですか?」

「蒼生に、病院に戻るように言ってほしいの」

「……」

 ――病院?

「なんですか、それ」

「……そう。やっぱり蒼生は何も話さず、学校に転入したのね」

「何も、話さず……?」

「はぁ」

 お母さんは大きくため息をついた。

「あの子は、余命1年って医師に言われているの」

 頭を何かで殴られ目の前が真っ暗になるような衝撃が走った。

 な……に? 

 なに言って……。

「どうして……そんなこと私に……」

 声を絞りだすように、お母さんを見ると、手にはたくさんの写真があった。