夕暮れ迫る校舎は鮮やかなオレンジ色に染められていた。
もう5月末。爽やかな風が私の背中を押すように、学校を出た。
「安達 新菜さん?」
私を待っていたのか、門の外で1人の女性が声をかけて来た。
ちょっとふっくらとした、それでもしっかりメイクをし、かっちりとしたスーツを着こなす美しい女性だった。うちのママと同じくらいの歳だろうか。
「安達 新菜さん?」
再び聞かれた名前に、私は無意識に「はい」と答えた。
「月城蒼生の母です」
「え……」
蒼生くんのお母さん?
なんで、こんなところに……え、どうして私に声をかけてきたの? 蒼生くんを迎えに来たんじゃないの!?
突然のことにパニックになり、キョロキョロと周りを見回した。
「そうよね。突然でビックリさせてごめんなさい。少しお話いいかしら?」
「……」
蒼生くんのお母さんって、蒼生くんのこと家に閉じ込めたり、酷いことしてるって……。でも、こうやって笑った感じはそんなふうに見えないけど……。
歩きながら話をする頃には、辺りは少しずつ暗くなり、街灯にもあかりが灯りはじめていた。
駅までの道を、ゆっくり歩く。