「私のことは、ほっといて」 

「新菜」

 じわじわと痛みだすような感覚に、頬の傷を押さえる。

 その手を蒼生くんは握りしめた。

「!?」

「このケガだって、お母さんが原因だろ?」

「!」

「しっかりと話し合った方がいい」

 私は蒼生くんの手を払った。

「新菜!?」

 みんなの驚く顔が見えた。

「……話すことなんて……あんな母親と話すことなんて、できない!」

 息が止まりそうな胸の苦しさを感じた。

 ママのことを思い出すだけで吐き気さえする。

 考えただけで、涙が溢れた。

「新菜!」

「新菜ちゃん!」

 ひな子と柚が私を支えた。

 体の震えが止まらない。

「蒼生! 新菜の様子が……」

 この状況から抜け出したいと思っていた。

 何もできない自分も嫌だった。

 どうしたらいいのかも、このままじゃいけないことも、分かってはいてもどうにもならないと思った。

 何かを変えるために反発して、こんな金髪にしてみたって、なにか現状が変わることはなかった。

 すべて自分がいけないんだって思った。何度も自分を責めた。

 ママのことを誰かに聞かれることも、本当は何も出来ない自分のことも知られることが本当はこんなにも怖かったなんて。

 現実を突きつけられて、こんなにも心が動揺するなんて。