「どうせ男と上手くいってないんでしょ。そんなの私に当たり散らさないでよ」

 バン!

 突然目の前が揺らいだ。その瞬間、ベッドに座っている私の膝の上にバサッと本が落ちた。

「二度と言うんじゃないわよ!」

 ドアから出て行くママの横顔は、本当に般若の顔になっていた。

 ヒリッとした痛みに頬を押さえると、うっすらと赤いものが見えた。机の上にあった辞書が顔面に飛んできたのだ。

「……」

 こんな重い本投げるなんて……私はシーツをギュッと掴んだ。

 本当に嫌……本当にウザイ!

 なんなの!?

 私っていったいなんなの!?

 親の機嫌に振り回されて、どうすればいいのよ!?

 もう……こんな家も、親もいらない。

 もう……死んでしまいたい!