「……」

 私は何も言えなかった。

 私も自分の親に嫌気がさしてる1人なんだ。でも、自分とは比べられない蒼生くんの両親や、その環境に何も言えなかった。

 ずっと自分だけが辛いと思い込んできた私には……。

「自分がこんなだから、親と確執のある生徒のことを放っておけないと思った。俺に何か出来ることはないかって思った」

「……」

 蒼生くんが真っ直ぐ私を見た。

 その瞳にドキンと激しく胸が鳴った。とっさに目を逸らす。

 蒼生くんのことを何も知らずに、蒼生くんがこのSSFを続けたいという願いも知らずに、自分の気持ちだけで『辞めたい』なんて簡単に言ってしまったことに情けなくなった。

 蒼生くんはどう思ってる?

 何も変わらない……何も変わることが出来ない、弱気な私のことを……。

「でも、自分の言いなりにならないことを嫌う、あの母親のことだ、次に何してくるかもわからない。この学校にいられなくなるかもしれない」

「そんなっ」

 私は思わず叫んでいた。

「……そんな大変なことになっているなんて……」

「……」

「……」

 翔太もひな子も柚も、それ以上言葉が続かなかった。