結局、3日分の授業のノートを持って、再び蒼生くんのマンションの前に来ていた。この場所にはもう二度と来ないと思っていたのにな。

 ここから見えるエントランス、それだけであの時のことを思い出してしまう。

 結局いろんなことが解決しないまま数日が経っていた。

「はぁ……」

 何度も出る止められないため息。行きたくないけど、さっきからうるさいくらいに私のスマホが鳴っている。きっと、SSFのみんなから「早く行け」みたいな言葉が並んでいるんだろう。

 仕方ない。そう自分に言い聞かせ、マンションに足を踏み入れようとした時だった。

 キキキー!と耳が裂かれるようなブレーキ音を立てて、目の前に黒い大きな車が停められると、マンションの中から腕を掴まれ、引っ張られるように蒼生くんが出て来た。

「蒼生くん!?」

 私の言葉に蒼生くんは驚いて顔を上げた。

「新菜!」

 私の言葉を無視するように、何人もの男たちが蒼生くんを車に押し込んだ。

「ちょっと待って! 蒼生くん!?」

 何!? なにこれ!?

 私は無意識に男の腕を掴んでいた。

 男は無言のまま私の手を払うと、さらに奥に蒼生くんを押し込んでいる。

「やめて!! 蒼生くん!?」

「新菜!」

「蒼生くんを離して!! 蒼生くん!」

 何が起こっているのか、何か事件に巻き込まれたのか、私は必死になって声を上げた。