「……誰に言われてやった?」

「え? 『誰に言われて』? 蒼生くん、どういうこと?」

「……」

 突然の蒼生くんの言葉に、水沢奈乃香の顔がどんどん曇っていく。

「俺のことを昔から知ってるって、おまえもそれなりのヤツだったってことだろ? 誰に言われてこんなことしてたんだ?」

「まさか、蒼生くん……」

 蒼生くんの顔付きが変わってる……あの時みたいな、私が男たちに絡まれた時みたいな……。

「……別に誰にも言われてないわよ。そんなことより、このままで平気だと思ってる?」

「水沢さん?」

「SSFをバラされてもいいの?」

「!」

「バラされたくなかったら、蒼生と別れること。それが出来なければ、嫌がらせは続くし、SSFもなくなるわね」

「そんな!」

 蒼生くんは真っ直ぐ水沢奈乃香へ向かうと、腕を掴み上げた。

「いたっ! な……なによ!?」

「おまえの好きにすればいい」

「え!?」

「新菜の方が大事だ」

「蒼生くん……」

 蒼生くんの顔が……怒りに満ちて……。

「俺がどんな人間だったか知っているなら解るよな? このままで済むと思うな」

「!」

 蒼生くんの怒りに満ちた横顔が、その声が水沢奈乃香を威圧していた。水沢奈乃香は蒼生くんの腕を振り払うと、逃げるように屋上を出て行った。

「蒼生くん! いいの!? このまま水沢奈乃香を帰してしまって!」

「はぁ」大きくため息をつき振り向いた蒼生くんは、私を抱きしめた。

「蒼生くん!?」

「……」

 無言のまま。

 でも言いたいことは、わかる。

 自分の怒りを落ち着けるように、蒼生くんは私をきつく抱きしめた。