「水沢さん、話があるんだけど」
「……」
通りすがりに声をかけた水沢奈乃香は、ゆっくり私へ振り向いた。
それは、今までのような柔らかな可愛い印象などない、鋭い目をして――。
夕暮れ迫る屋上に私たち3人は来ていた。ここなら誰にも見つからないと思ったから。
「なに? なにか用?」
腕を組みイライラした水沢奈乃香の態度に、今までの印象が嘘にように崩れていった。
「私が蒼生くんの彼女ってことで嫌がらせの手紙はいつものことだった。でも、いつからか、その嫌がらせも1つだけ違ったものがあった。ただの嫌がらせの手紙ではない悪質なもの。それは、水沢さん、あなたでしょ?」
「……さあ、なんのこと?」
「SSFに送ってきた悩みも本当は嘘。どうしてそんなことしたの?」
「……別に。他のみんなと一緒よ。あんたにムカついてただけ」
しれっと答える水沢奈乃香の顔は、今までしてきたことに悪気はないような口ぶりで……。
「そんなことで、あんな嫌がらせをしてたのか? 新菜を階段から突き落としたことも」
「……」