蒼生くんに気持ちを伝えていなくてよかった。それだけが救いだ。

 目を瞑ると思い出す、昨日の蒼生くんの横顔。

 蒼生くんを知らないことはいっぱいあって、そこに私なんかが侵入してはいけないんだ。

 きっと、傷つく。

 だから蒼生くんは、あの日『きっと新菜は後悔する』あんなこと言ったんだ。

 そうだよね、彼女がいたから私にあれ以上何もしてこなかったんだし、急いで部屋を片付けていたのだって隠したい何かがあったから……。

 蒼生くんに彼女がいること、なんで考えもしなかったんだろ……。自分の蒼生くんへの想いが大きくなり過ぎて、考えなければいけないこと、見つめなければいけないこと、そのピントが少しずつズレていってしまっていたんだ。

 誰かを想うって心が強くなきゃ駄目な気がする。

 そう思と、柚はすごい……吉岡先生のことをしっかり考え、逃げることなく真正面から受け止めた。

 逃げてばかりの私なんかとは大違い……。

 ああ、ダメだ……。

 泣けてくる……。