屋上に続くドアを開けると目に飛び込んできたのは、何も遮ることのない真っ青な空と、手の届きそうな大きな白い雲。暗い階段から一気に眩しい光の中へ飛び込むと私は無意識に顔を手で覆った。
秋といっても、まだまだ暑さの残る10月末。屋上の吹き抜ける風が気持ちよくて、強い風にあおられながらも感じる自然の香りに、私は無意識に大きく手を広げていた。
「飛び降りるなよ」
突然の声に驚き振り向くと、ドアの真上に座る1人の生徒。
それが、月城蒼生だった。
「なんで……」
「なんで?」
私が言葉を発すると同時に、月城蒼生は座っていたところから私の目の前に飛び降りた。
「!」
目の前に立つ月城くんの長い前髪が風に吹かれた。
大きな瞳が真っすぐ私を見つめる。その瞳は、転校してきた日に見たあの時のまま。その瞳に見つめられると、話そうと思っていた言葉が止まる。
突然、月城くんがクスッと笑った。