「ちょっと! 柚なに言って……」

「笠原!」

 柚の言葉に慌てるひな子を、翔太が止めた。

「だって! こんな嘘つきで、生徒や女性をだまして! 柚まで傷つけて、私は許さないよ!」

「ひなちゃん! もう、いいんだよ」

「柚……なんで……」

「先生のしたことはいけないことだし、女性を傷つけるものだったと思う。でも、先生としてすごく優しくて、生徒思いなのはみんなも知っていることでしょう?」

 ぽろぽろと涙を落としながら、柚はみんなに説明するように声を上げた。

「そんな先生が本当の先生だと、私は信じたい」

 真っ直ぐ先生を見つめ力強く言った柚の顔は、今まで泣きじゃくっていた弱々しさはなく、この短い時間の中で何かを思い考えた、その結論なんだということがわかった。

 柚の言葉にみんなは無言になる。

 涙が、降り続く雨のように止むことはなくて、心の中が涙の海に溺れてしまいそうになりながら、絞りだす柚の言葉をみんなは聞いていた。

「だからね、先生。しっかり治して、また先生の道を目指して欲しいよ」

「柚……」

 吉岡先生は崩れるように座り込んだ。

 まるで大きな悲しみに飲まれてしまったように、吉岡先生は小さく……小さくなっていった。