「……」
無言のままの吉岡先生を見つめた柚の瞳から大きな涙が落ちた。
「柚……」
何もかもが嘘だったと……想いを寄せた人がすべて嘘で塗り固められていたと……。
ひな子がそっと柚を抱きしめた。
その様子を見ていた蒼生くんが席を立ち、音楽準備室から出ようとしていた。
「蒼生くん!?」
「蒼生! 出るな!」
このSSFのことを学校の先生にバレてしまうことはしたくなかった。だから音楽準備室からの声だけのミッションにしようと決めた。
それなのに、蒼生くんはこの準備室から出て行こうとしている。翔太も陸くんも慌てるように蒼生くんへ声をかけるが、蒼生くんは無言でみんなの顔を見回し小さく笑い、準備室の扉を開けた。
暗くなった音楽室が準備室から漏れる灯りで、吉岡先生の顔が一瞬浮かび上がった。画面から見た吉岡先生はその灯りを受け、まぶしそうに顔をしかめた。