見るたびどんどん体を小さく丸め、うつむいていく柚の姿。無言のままモニターを見つめる陸くんの姿。2人を私は少し離れたところから見つめていた。

 さっきまで赤くやわらかい空を映し出していた窓の風景は、だんだんと濃い青に変わっていった。

『純粋な恋だと言うのなら、なぜ嘘をつく必要があるんですか? あなたの嘘に傷ついた女性はたくさんいる』

「嘘!?」

 今まで余裕を見せていた吉岡先生が蒼生くんの言葉に再び動揺し始めた。声しか聞こえない薄暗い音楽室を何度も見回し、落ち着きなく歩き回っている。

「ウソをつく必要がどこにあるんだ? みんな僕に恋をして、それを受け入れているだけだ。受け入れを拒む方が傷付けると思わないか!?」

 吉岡先生は同じ場所を落ち着きなく動き回り、口ごもるように何度も口を手で覆うしぐさを見せた。蒼生くんは少しずつ、じわりじわりと吉岡先生を追い込んでいく。