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「新菜ちゃん、おはよー」
「あ、柚、おはよー。はやいねー」
「新菜ちゃんもね」
「あ、あはは……」
いつも遅刻ギリギリの私が、余裕を持って学校に到着した日。いつもに増して元気でニコニコ笑顔の柚が眩しく見えた。
「柚、なにか良い事あったの?」
「え……う、うん」
「えー? なぁにー?」
柚は私に近づいて小さな声で言った。
「新菜ちゃん、あとで話聞いてくれる?」
「ん? うん、もちろん」
「ありがと。あ、吉岡先生!」
「おはよー」
大好きな吉岡先生へ走っていく柚の後ろ姿は今日も跳ねるように、楽しそうに見えた。柚へ声をかける吉岡先生はいつもと変わらず、細い目がたれ、優しそうな笑顔を見せていた。