「蒼生くん! 行こう!」

 このままここにいてはいけない気がして、私は蒼生くんの手を強く引っ張った。

 私の勘が言っている。

 このままではいけないと。

 何か……吉岡先生の何か、違和感のようなもの。

「新菜! 新菜、どうした!?」

「!」

 蒼生くんの手を引き、ずいぶんと走ってきたことに気付く。

「新菜……」

「……なんだか」

「え?」

 こんなこと言っていいのか……私のただの勘だ。この胸騒ぎのようなものが、いつもの違和感が私を覆っている。

「新菜、話してくれ」 

「蒼生くん……」

 私はうつむいた。

「わからない……でも、この違和感がなんなのか……。吉岡先生のあの目が何か……」

「……」

 その後の蒼生くんはずっと無言だった。

 私の話をどう受け止めたのか、何かを考えているような、そんな……。

 私のこの勘が当たってしまう出来事が起きたのは数日後だった。