「2人ともさ、自由なんだよ。大人になっても自分を優先して。だったら子供なんて……俺なんていらなかっただろって……」

「……」

 蒼生くんの言葉が途切れた。

 ああ……。

 蒼生くんは、私とまったく同じ思いを抱えて生きてきたんだ。

 自分のことを必要ないと、そう感じて――――。

 カチャン……テーブルに置いたグラスの氷が跳ね、強くぶつかる音が静かな部屋に響いた。

 私は蒼生くんを抱きしめた。

「新菜……」

「……」

 強く、強く、抱きしめた。

 1人じゃないんだよって言いたくて。

 でも言葉に出来なくて。

 それを伝えたくて、思い切り抱きしめた。