「この写真覚えてる?」
「え? 覚えてるもなにも……」
この写真は私を変えたようなものだから……。
あれ?
「どうして? 覚えてるってどういうこと?」
「この写真、駅のホームに広告として張り出されてたんだ。俺にとっては特別な、気に入っている1枚だったからコンテストで選ばれた時は嬉しかったよ」
「そうなんだ」
「自分も嬉しくて、この写真を駅に何度も見に行っていた。そしたら、そこに新菜がいた」
「私!?」
私の驚いた様子に、蒼生くんはくすっと笑った。
「覚えてないか」
「ううん! 覚えてるよ! 私はこの写真を見て今があると思ってる」
「新菜……」
「どうしてかって私もわからないけど、この写真を見て、なんだか自分が変われるような気がしたんだ。この吸い込まれてしまいそうな海の写真に。この雪のように海に飲まれてしまいたいって思った」