「新菜?」
「あ……」
「どうした?」
「この写真。どうしてここにあるの? こんな大きな……」
「……俺が撮ったものだから」
「え!?」
蒼生くんが撮った?
蒼生くんが写真を好きなのは知ってる。それに、見れば写真についての雑誌や、フィルムみたいなものがいたるところに置かれていた。かき集めた様子に、片付けをしていたのはカメラや写真についてのものばかりだと分かった。
「この写真、駅のホームにあって……それで、私……」
上手く言葉にならず、しどろもどろになってしまう。
この写真を見たいがために日に何度も駅に行った。
目を瞑れば蘇るこの世界を感じたいと、脳裏に焼き付けるほど、何度も何度も見た写真だった。
それがいつか、あの駅から消えていた。
そして、今、目の前にある……。
「うん、そう」
蒼生くんはそう言いながら写真の前に立った。壁一面に貼られた写真は圧巻で、大きな海が私たちを飲み込んでしまいそうな感覚にさせた。