「あ……」

 その景色に見とれていて気付かなかった。

 大きな窓からの輝くネオンに照らされるように、リビングの壁目一杯に飾られた大きな写真。

「……」

 その写真は、私の人生を変えたと言ってもいいくらいの、あの海の写真だった。

 大きな海と砂浜。

 空はグレー一色で、降る雪が海に吸い込まれていくように見えた。

 私は目を瞑った。

 あの時の気持ちがよみがえる。

 何もかも嫌で、私の関わるすべてをぶち壊したくなった、あの日。

 ううん、私に関わるすべてじゃない……私自身を壊してしまおうと思っていた、あの時。

 私の世界が無音になった。

 この感覚はなんだろう……。

 頭の中が“無”になる。

 すべてがリセットされるような感覚。